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セロ弾きのゴーシュ 異聞 その1

みんなんちょっと、赤くなった目をこすりながら、森の集会所へやってきました。

今度、新しく、小川に架かる古い水車小屋へ引っ越してきた男の事で相談するために集まってきたのでした。

みんなは、古い水車小屋の近くに住んでいました。

野ネズミ、狸、フクロウ、カッコウなどが家族や、一族を代表してきていました。

引っ越してきた男の奏(かな)でる、たまらなく下手な音に、みんな困っていたのです。

夜は、寝静まる時間、食事をする時間でもありました。

寝入いった頃に、がーがーごーごと調子はずれな音を出すのです。

びっくりして目を覚ましてしまいますし、獲物は逃げてしまい・・・みんなへとへとでした。

みな、住み慣れたところは離れたくないし、かといって、夜眠られないのも困る。

夜、狩りができないのも困る。

そう思って、みんなでいい知恵を出そうと集まったのでした。

最初は、追い出そうという事になりましたが、みなそんな力はありません。

先回は、引っ越すべきか、否(いなか)を語り合いました。

皆は、それは難しいという事になりましたので、引っ越さないくて良い様に、どうしたらいいのかという事になりました。

森の集会場は、郊外の森の中です。

みんな、寝不足だったり、空腹だったりしていい意見が出ません。

「ねぇ、水車小屋に、最近、越してきた男はなんであんなに下手なんだい❓」

とカッコウが聞きました。

そうして、一呼吸おいて

「夜中から朝にかかて、がーがー、ゴーゴー音を立てているんだけれど、あれは下手になる練習をしてるのかい?一体何だい?」

と云いました。

狸の親父さん、大きな腹を抱えながら苦しそうに、

「この間から、夜になるとがーがーごーごとうるさくて、眠られないのだよ。」

時々日向ぼっこに来る猫がしたり顔で

「どうも、町の金星音楽団の団員らしいね」

狸が、目をパチクリさせながら

「あれで、音楽団楽員だって・・・・」

カッコウが

「あんなだらけた、音程のずれた楽員なんているのかねぇ」

野ネズミお父さんは、

「夜、巣穴に響いて眠られないんだよ。

前みたいに、水車が、ギギギバタン、ギギギバタンという音なら、丁度、子守唄ような感じで聞けましたがね。」

とパチクリした目をくりくりとさせて云いました。

猫がこんなことを言い出しました。

「下手だから練習するんじゃないかなか。

昨日も泣きながらぶつぶつ言いながら帰ってきたよ。」

カッコウが、「なんか、文句言っていたねぇ」

猫は、音楽というものは上手ければ大変精神衛生上よい効果をもたらすという事を聞いてきました。

そこで、住人は、上手くなれば引っ越さなくてもいいのではないかとというお話になりました。

みんなは、何が悪くてあんなに下手なのかわかりません。

原因がよくわかりません。

楽団員なんだから、そこまで下手ではないと思うのだが・・・

音程がずれている。

間延びする。

テンポが悪い。

口々に云うのですが、なんとなく、要領を得ません。

そこで、皆は、猫は、町に住んでいることもあり、耳もよく、音楽には詳しいので、値踏みをしてもらおうという事になりました。

カッコウが、「最近は、夜中から明け方まで弾いているので眠ることもできない」

ぐったりしたとしたか顔で言いました

猫は、したり顔で

「もうすぐ町の音楽会があるんじゃなかったかな。

だから余計に練習をしているんだね。」

みんなは一同に、「それは何日だい?」と声をそろえて言いました。

猫は、自信がなさそうに、「来週か、さ来週じゃないかな」

フクロウが一番げんなりした顔で、

「あと二週間も続いたらわたしゃ飢え死にですよ。

あの音のせいで、ネズミもモグラも夜出てきません」

ネズミのお父さんは、首をすくめました。

フクロウは、

「もう少しましな音で、聞きほれるぐらいなら、ネズミもモグラもそのそでてくるんそのそでてくるんですがね」

猫が、茶化すように

「出てきて、喰われてしますんですか?それなら出てこない方がいいじゃないですか」と嫌味たらしいことを目を細めながら言いました。

フクロウは、

「我々は、紳士協定で、ちゃんと縄張りがあるんでね、猫みたいにどこへでもうろうろ入って行って人のものをちょろまかしているのとはちがんだよ。」

すると猫は、背中を赤くく光らせながら

「じゃ、私は帰った方がいいようですね」とぷんぷん怒り出しました。

すると狸のお父さんが

「ねこさん、あなたがいなけりゃ困るじゃないか」

とちょっと目をしばたた出せながら困ったように言いました。

そうして

「最初にどの程度の腕前か、どの程度の楽器なのか判断をするという重大な責任があるじゃないですか、それをお忘れですか」

とさも重そうな腹を抱えて言いました。

ねこは、プンプンしながら

「今晩行ってきますけど、あとはご自分たちで何とかしてくださいね」と云った

ネコは、気を取り直したような顔で

「ところで、あの男の名前は何と言うんだい?

こーしゅ、とかゴーシュとか言うように聞いていたけれど?」

カッコウが

「ゴーシュ」と云いました

「ねじれ者?左利き?」

「コーシュてなんだい?」

「よく夜中に訪ねてくる、彼の友達、と云うか恋人だね」

「夜中に忍んで来るなんて変だね」

「でも最近、来ないみたいだよ」

「別れたのかなぁ」と口々に言いはやしました。

猫が突然

「わかりました、ゴーシュさんですね、今晩行ってきます。

野良になってから人間の家の床下はお気に入りだが、部屋の中は剣呑だね」

と云いながら猫は、帰っていきました

残った狸のお父さんは

「では、とにかくここから出ていっいてらえないなら、うまくなってもらわないとね。」

カッコウは言いました

「猫さんの観察眼に頼るしかないですね。

で、次はだれがいきますか?」

みんな黙ってしまいました

すると野ネズミ父さんが

「演奏が下手すぎるなら、みんなで引っ越すしかありません。

 何とかなんる様なら・・・何とかなるようにしてあげましょう。

 猫さんの報告を聞くしかありません」

狸のお父さんが、「今日行きますかねぇ」といった。

みなんかをお合わせて見まわしました。

そうして、ふーと息を吐いて

期待しましょうと言って別れた。

その日の晩、猫はあくびをしながら、小屋屋根の上でねそべっていました。

この上で寝るのが一番気持ちいがいいなぁと嘆息を漏らしました。

すると、町の方が、月夜に照らされて大きな荷物を抱えた人間が歩いてくるのに気が付いた。

足を引きずるよにして歩いていきました。

猫は、人間は、人のところへ行くときは「おみやげ」とかいうものを持っていくんだったねぇ。

口の中で

「おみやげおみやげ」と云いながら歩いていると、水車小屋の前に来てしまいました。

お土産なんてありません。

きょときょとと見まわすと、青いトマトが見えました。

これでいいやと思って、茎を歯で食いちぎって1個手に持ちました。

翌日

森の中には、背中をぶるぶると青く光らせて寝込んでいる猫の周りにみんながぞろぞろ集まると、猫は開口一番

「あー、ひどい目にあった。

 人間てやっぱり怖いや

 うちのおばあさんの家に蓄音器があって、いつも、トロイメライを聞いていたので、これならよくわかると思って注文したんだ。

 ロマンチックシューマンのトロイメライを弾いてくださいてね。

 すると、弾いてあげるみたいなことをことを云っていきなり、大音響でインドの虎狩りを弾きだしたんだ。

 ずんずんバンバン。」

 猫は、いろんなところをぶっけたみたいで、ところどころ青く光っていました。

 おまけに最後、親切そうなことを云うので舌を出すと、火をつけられてね・・・」

カッコウは、せっぱつまった感じで

「どこが悪いと思う?」と聞くと

猫は「うーん・・・・基本ができてないね。

ドレミの音程も変だし、テンポもおかしい、腕が悪くてテンポがおかしいのか楽器が悪いのかわからない。」

床下で聞いていた、みみずくのおばさんが、

「音が変だねぇ、なんだかズレているよ」

すると、狸のお父さんが、

「ドレミが一番、上手なのは、カッコウさんですよね・・・・」

カッコウは、ふるふるっと震えて・・・「私の順番ですか・・・・・・仕方ないですね」

猫が意地悪く

「窓を閉められると、捕まって焼き鳥にされてしまいうかもしれませんよ」

カッコウは、灰色の胴体を、いよいよ薄く沈んだ色にして

「今晩、屋根裏から入ってみようと思います」

猫が云いました

「人間は、鳥や、動物なんて馬鹿にしているから、おだてないとだめだよ。

こちらが教えてやるなんて言った日には、それこそ何にも聞きやしない。

いうななら、教えてくださいとでもいった方がいい」

カッコウが、「何を教えてほしいと言えばいいんですか」

猫は、「ドレミの音階も少しおかしいから、カッコウさんの正調なドレミを聞かせれば、自分で気が付くのじゃないかな・・・」と焦げた下で苦しそうに云いました。

カッコウは、不安げに「気が付きますかねぇ」といった

狸のお父さんは、

「何せ、人間は、あとから来たくせに自分たちが一番偉いと思い込んでるやつらです。

でも、おだてられると気持ちよくなって、いい人になります。」

カッコウは、もうすぐ南の国へ留学することになっていたので、

「留学前の復習とでもいえばいいんでしょうか?」

猫はめんどくさそうに

「留学なんて言うと、生意気だって怒るから、外国に行くからとでも言っておけばいいや」

と云いました。

そうして、みんな眠そうな顔ををして、ぞろぞろと帰っていきました。

カッコウは、昼の内に、屋根の軒の破れ目から天井裏を抜けていく方法見つけていました。

屋根裏は暗くてここちよかったので、寝不足も手伝って、うとうと眠り込んでしまいました。

あたりがシーンと静まって寝込んでいると、急にバタンと音がして

天井裏に光が漏れてきました。

なんだか、もしゃもしゃパンを食べて、

「さて」と云いながら、大きな箱を開けて楽器を取りだしました。

カッコウは、明け方になってようやく帰ることができまた。

ズキズキ痛んでいるくちばしが気になりましたが、焼き鳥にされてしまうのはたまらないと思って逃げて帰っていきました。

その日の夕方

森ではまた皆が集まってカッコウの話を聞きました。

カッコウの腫れあがった顔を見ながら、みんなは、口々に言いました。

大丈夫かい?

どうだった?

カッコウは言いました。

「ドレミファの音階は何とかなるみたいです。

でも、なんか音がズレて変です。

楽器が変なのか、弦が悪いのかはわかりませんでした。」

狸のお父さんが

「では、うちの子を今日は行かせましょう」

フクロウが、「大丈夫かい」

猫は、「丸々しているから捕まって食べられちゃうかもね」

狸のお父さんは、「いざとなったら、化かして逃げますからいいですよ」と笑って言いました

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